7月17日(日)、東海社会人サッカーリーグ1部の第10節が行われ、鈴鹿アンリミテッドFC(以下、鈴鹿)はホームのAGF鈴鹿陸上競技場(石垣池陸上競技場)にFC岐阜SECOND(以下、岐阜セカンド)を迎え、1-0と競り勝ちリーグ6連勝を飾った。
今シーズン初のマッチスポンサーとして株式会社リアルワールドが特別協賛した『クラウド エキサイトマッチ』。AGF鈴鹿での連戦は「ブラジルフェスタ」と銘打ち、サンバやカポエイラ、石井明美さんのステージショー、そしてシュラスコやパステルといったブラジル料理が出店しており、南米の香りが漂う雰囲気の中、708人の観客がリーグ中断前最後のホームゲームを見守った。スタメンはGK月成、DF村田、藤井、野口、藤田、MF矢野、堀河、渋谷、泉、小澤、FW柿本。前節は初出場2名を含めてメンバーを入れ替えた鈴鹿だが、この日は村田と藤田が先発に復帰し、堀河も久々の先発復帰を果たした。
5月に対戦した際には4-1と快勝している相手だが、仮にもJ2のセカンドチーム。決して侮っていたわけではないが、立ち上がりから中盤の攻防で押される形となり、思うようにトップの柿本にボールが収まらない。今シーズンの鈴鹿の特長である試合の入りの良さが、この試合では鳴りを潜めてしまっていた。
しかし、怪我が癒えて久々に先発復帰した男が流れを変える。8分、泉からのクサビのパスがペナルティーエリア内左の位置にいた堀河へと渡り、トラップで浮いた球を左足ボレーで捉える。これはゴール右へとわずかに外れたが、このワンプレーを機に鈴鹿イレブンが本来のプレーを取り戻していく。
17分、右サイド村田のクロスがファーサイドに流れ、拾った藤田がPA手前左から右足でシュート。27分には、野口のインターセプトから左サイドに開いた泉が受け、低いクロスに柿本が合わせる。いずれも枠を捉え切れなかったが、徐々に得点のにおいがし始めていた。
一方、30分にはヒヤリとする場面も。FKをゴール前で合わされてネットが揺れるが、これはファールの判定によりノーゴール。互いに無得点のまま試合を折り返した。
ハーフタイムに小澤監督が動く。矢野と柿本に代えて吉川と北野を投入。「思っていたほど柿本にボールが収まらなかったので、小澤司を北野の近くでプレーさせて裏を狙う」という策に出る。しかし後半16分、相手選手が退場となるアクシデントが発生。鈴鹿は数的優位に立ったものの、一方で岐阜セカンドにとっては『このまま守って勝ち点1』という狙いがはっきりしてしまい、なかなか崩しきれていなかった岐阜セカンド守備陣がより強固になってしまった。
引いて守る相手に対し、柿本を下げてしまった鈴鹿は前線に高さがない。小澤監督は早い段階で吉川や野口を前に出し、パワープレー気味に押し込んでいくが、最後のところで岐阜セカンドのGK的崎純平がことごとく鈴鹿の決定機を阻止する。終盤立て続けに決定機を迎えるも、GK的崎の牙城を崩せず。アディショナルタイムも予定の4分が経過し、誰もが諦めかけたそのとき、奇跡は起きた。
相手のゴールキックを藤田が頭で跳ね返すと、前線でバウンドしたボールを北野が頭でつなぐ。これに呼応した小澤がファーストタッチでゴール前に侵入。DFがたまらずタックルを仕掛けるが、ボールには当たらずに小澤が倒され主審は迷わずPKスポットを指差す。
大きな歓声が上がり、鈴鹿の選手たちも喜びをあらわにするが、まだゴールが入ったわけではない。キッカーは主将にしてエースの北野。場内の視線を一身に浴びた背番号10のシュートがこの日当たりに当たっていたGK的崎の逆を突いてネットを揺らす。この試合唯一のゴールと同時に試合終了の笛が吹かれ、劇的な幕切れに涙するサポーターもいたという。
「僕たちの力だけでは、ああいう奇跡的なことは起こりません。熱い声援がかなり力になっているということが今日、証明できました」とはPKを“アシスト”した小澤。次のホームゲームは9月までお預けとなるが、リーグ中断までまだアウェーゲーム2試合を残している。奇跡を起こすサポーターの声援は、アウェーでも必要だ。
首位のFC刈谷、そしてFC.ISE-SHIMA、ヴィアティン三重といった上位陣が勝利し、2位の鈴鹿は2試合消化が少ない状態で勝ち点8差をキープ。次戦となる第4節は7月23日(土)、FC.ISE-SHIMAとのアウェーゲーム。次のホームゲームは9月10日(土)のChukyo univ.FCをAGF鈴鹿に迎える。